廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
元の道を引き返し、また劇場ロビーに戻ってくると不意にダリオンが言った。

「あれが座長なわけがない」

「座長……では無さげね」

頭上で交わされる言葉に、私は耳を傾けた。
おばあ様もダリオンも、すでにアレストがただ者ではないと気付いている。
だけど、それを向こうが言わないのならと、知らぬ振りをしたのだ。

「あなたはなんだと思う?ダリオン」

「……さぁ。それは、部屋にいたもう一人に聞く方が早い」

「やっぱり、気付いていたのね」

部屋に、もう一人、いた?
あの時、応接室に誰か他の人がいたというの?
私には気配すら感じられなかったのに。

「ふふ、まぁどうでもいいけれど、アレストはあなたに対して攻撃的だったわね」

おばあ様は楽しそうに笑った。
確かに最後の質問はロケットランチャー級の破壊力だったわ。
ダリオンが失礼なことばかり言うから、温和(に見えた)アレストもキレたのかしら。
いろいろ思いを巡らしていると、ダリオンが急に何かを思い出して言った。

「『そういった趣向』って何ですか?」

チッ!覚えていたのか……おばあ様はそういう表情をして私を見下ろす。
そして、何食わぬ顔でこう言った。

「……さ、ルキア、帰りましょう」

「は、はいっ!帰りましょう」

真実なんて、恐ろしくて言えるわけがない。
後ろで何やらぶつくさと文句を言うダリオンを背に、私とおばあ様は逃げるように迎えの馬車に乗り込んだ。
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