廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「あ、ありがとうございます」

「いいのですよ。では応接室を借りていますので、そこでお話を伺いましょう」

そう言うと、アレストは歩き出した。
歩幅は狭く、ゆっくりと。
多分、私を気遣ってだと思う。
部屋に入ると、エレナが目敏くティーセットを見つけ、心得たかのようにお茶を淹れ始める。
そのタイミングで、私は本題を切り出した。
ルイザ様の病気の件は内緒なので、王太子宮で簡単な演劇を披露するのだと伝える。
さらに演目として、今話題の「王子と赤い髪の巫女」の一人芝居を演じたいと言い、そのために、近くでお芝居を見て勉強させて欲しいと願い出た。

「なるほど。構いませんよ」

「本当ですか!?ありがとうございますっ!」

簡単に了承されてしまった。
いろいろ詮索されたりするかもなんて、考えた自分が恥ずかしい。
アルカディア劇団の座長は、とても心の広い人だった。

「そういえば、昨日劇場近くの食堂で聞いたのですが、あなたの芝居はとてもご利益があるそうですね」

「え?あ、いや、そんなことはない、と……」

「そうなのですか?なんでも、カトレア様の病を一人芝居で治し、療養所の患者を人形劇で治し、巷では女神の奇跡だと言われているようですが」

「たぶん、違います。偶然が重なっただけで、私は何も……奇跡だなんてありえない……」

声は次第に尻すぼみになる。
明らかに自分の力だと確信出来れば、不安も生まれない。
でも、私の知らないところで、私の知らない力が一人歩きする怖さ……。
実はその影に怯えている自分がずっといたのだ。
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