廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「あなたが劇団の芝居を見て覚えている時、私も側にいていいですか?」

「……側に?え……ずっと?」

「側に、ずっとです」

アレストは頷きながら微笑んだ。
こちらとしては問題ないけれど、お芝居を見ている私の側にいてなにが楽しいの?
彼の心中が理解出来ず、私は小さな声で「はい」と答える。
するとアレストは、両手を打って立ち上がり、ヒョイと私を抱き上げた。

「では早速行きましょう!今からなら午後の公演に十分間に合います」

「え!?あの、座長さん!?え?ええっ!?」

その早業になす術もなく、私の体は彼の腕のなかにすっぽりと収まっていた。

「お、お待ちください!」

慌てて止めようとしたエレナを優雅にかわし、アレストは私を抱いたまま余裕のステップで走り出した。
遅れをとったエレナも、急いで私たちを追いかけるけれど、疾風のようなアレストにはなかなか追い付けない。
ただ者じゃないって思ったけど、実は忍者じゃないの?
あまりの早さに必死でしがみついていると、あっという間に舞台袖に辿り着いた。
舞台袖では、お化粧もバッチリの役者たちが午後の部に向けて待機している。
アレストはゆっくりと私を下ろすと、驚く彼らに私を紹介した。
みんなアルカディア国の人なのか、アレストと同じ濃い茶色の瞳である。
私の瞳も同じ色。
そう思うと、全然関係ないのに親近感が沸いた。
< 152 / 228 >

この作品をシェア

pagetop