廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
2、ルイザ様と演劇

目の前のラブラブ劇場を、私は何も知らない子どものように、にっこり笑ってやり過ごした。
今はそのことよりも、ナリスに会わなくてすんだ幸運に感謝している。
ルイザ様には悪いけど、出来ることなら、二度とナリスには会いたくはない。
「用事がある」と断ってくれたナリスに感謝しつつ、私は本来の目的にたち戻ることにした。

「ルイザ様、それでは早速始めましょうか?」

「ええ、ええ!そうね。今日の一番のお楽しみだもの!」

両手を合わせ、小首をかしげ、無邪気に微笑むルイザ様は、本当に天使だった。
その可愛さには、ローレウス殿下のみならず、私も魅了されそうだ。
可愛いは最強かもしれない……なんて考えながら、私はお芝居の準備を始めた。
まずは、メイド三人を呼んで、簡単な舞台の作成である。
舞台といっても、大きな赤いビロードのカーテンを緞帳の代わりにする程度のものだ。
緞帳の端をエレナとローリーに持って貰い、私はそのうしろで衣装の準備をする。
衣装係のミレイユは、この日のために「魂込めて縫い込んだ」という衣装を、嬉々として私に着せた。
魂が込められているだけあって、衣装の出来は最高だった。
光の加減で色を変える美しい生地に、緩やかにドレープをきかせた技術はさすがミレイユである。
そして、準備は出来上がった。
ミレイユが去り、舞台中央には息を整える私だけが残る。
緞帳を持つエレナに準備万端の目配せをすると、エレナは素早くローリーの元へと走った。

観客はルイザ様、ローレウス殿下とおばあ様。
練習風景はおばあ様にも見せていないので、全員が初見である。
私は観客の視線を一身に集め、朗々と物語の口上を述べた。
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