廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「さてみなさま、本日語られますは、異国の愛の物語。互いを思いながらも、悲しい運命に翻弄される一組の男女のお話でございます」

ゆっくりお辞儀をすると、私はクルリと一回転した。
場面転換は、分かりやすく一回転することでメリハリをつける、という作戦である。

王子と巫女の運命的な出会いに始まり、惹かれ合う二人の逢瀬。
やがて心が通じ合い、二人を隔てるものが何もなくなってからの、迫り来る暗雲……。
身振り手振りを加えつつ、声の強弱、視線の流し方、様々なものに気を配る。
王太子宮、妃殿下の間は今、私の声と衣擦れの音しか聞こえない。
ルイザ様の表情はくるくる変わり、その度にローレウス殿下の手をギュッと握り締めている。
ローレウス殿下は、そんなルイザ様の表情を、微笑ましく見守っていた。
おばあ様も前のめりで成り行きを見つめていて、私は手応えを感じていた。

やがて、このお芝居一番の見せ場、赤い髪の巫女サリファの最後の台詞に差し掛かった。
これは、彼女が遠くの地から王子を思い、彼に心から幸せになって欲しいと願う言葉である。
台詞を発しようとした、まさにその時、私の中に何か熱いものが滑り込んできた。
熱を帯びた「それ」は、心臓の少し下あたりで留まっている。
不快感はない。
むしろ、全身を誰かに包まれているような、幸福感に溢れていた。

「愛するあなた、私の全て。あなたはやがて、世界に名だたる王になる。私はどこにいても、その軌跡を見ています。たとえこの世から消えても、ずっと。ずっと……」
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