廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
私の口から出た台詞は、台本にはないものだった。
大きくズレたものではなかったけれど、言い回しや雰囲気が全く違う。
別の何かが乗り移り、私の口を通して語った……そんな感じだった。
まるで、本物のサリファの言葉みたいな、生々しさと切なさ。
体の中に留まる熱は、ひょっとしたら彼女なのでは。
ふとそう考えたけど、呆けている場合ではない。
今は「上演中」なのだ。

私は、そのまま芝居を続け、やがて全てが終わる頃、体の中の熱は失くなっていた。

「……すごいわ……なんて、悲しく切ないの……とても、言葉で表現しようがないわ」

痛くなりそうなくらい手を叩き、ルイザ様が言った。
彼女の大きな目からは涙がポロポロこぼれ、隣のローレウス殿下が優しく肩をさする。
その殿下の目も少し赤かった。

「見事だわ。アルカディア劇団にも負けずとも劣らず……いえ、私の目から見れば、あなたの方が感傷的だった。まるで、サリファ本人みたいにね」

おばあ様も頷き拍手を送ってくれた。
感傷的……おばあ様が言ったのは、きっと最後のサリファの台詞。
改めて考えてみると、熱いものは、内側から湧き出てきたものだと思う。
何かが乗り移った、のではなく、眠っていたものが起こされたという感覚が正しい。
だけど、あれが何であれ、無事上演は終了したのだ。
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