廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
3、大英雄とお勉強

数日後のエスカーダ邸、書斎兼執務室。

ここで今、私は勉強中である。
最近ずっと軍事演習で忙しかったダリオンは、屋敷に帰るなり私を部屋に呼んだ。
そして、軍部から持って帰ったいくつかの本を元に「授業をする!」と言い始めたのである。
二人きりだというのに、色気皆無の軍事戦略学習。
基本的な隊列の組み方や、騎馬隊と相対した時の歩兵の対処の仕方など。
淑女としては全く関係のない知識だけど、私はとても満足している。
ダリオンの授業はわかりやすいし、本人がとても生き生きしているので、(顔を)見ているだけでも楽しいのだ。

「今日はこの辺にしておこう。それで、ここからは別の話になるのだが……」

と言いつつ、ダリオンはパタリと本を閉じた。

「非常時における伝達方法、というものを知っているか?」

「非常時……?ええと、危険に陥った時に、誰かに知らせる手段、ですか?」

「そうだ。たとえば、敵に拘束されて声が出せない場合、近くにいる味方に助けを求めるにはどうする?」

「気付いてもらえるように、音を出す……でしょうか」

すると、ダリオンは満足したように頷いた。

「いい答えだ。指先が動けば指先で、足が動けば足で。とにかく音を出し伝えること。だが、相手に気取られてはならない」

トントントンー、トントン。
指先で軽く三回。
ダリオンは机を叩いて見せた。
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