廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「カトレア様……約束もなく突然訪ねて来てしまい申し訳ありません。ですが、どうしてもダリオン様にお願いしたいことがあるのです!」

「突然来るのは構わないわ。でも、そんなに慌てるなんてあなたらしくないわね。何があったか落ち着いて話してみなさい」

冷静に諭すように、おばあ様は低いトーンで喋った。
その言葉で、少し落ち着きを取り戻したトマスは、何度か深呼吸をして息を整える。
そして、きちんと椅子に座ると、ゆっくりと語り始めたのだ。

「実は、昨日からセドリックが家に帰って来ないのです」

私とおばあ様は顔を見合わせ、ダリオンはトマスの近くに移動した。

「帰って来ないだと?」

「はい、ダリオン様。昨日の昼、商業区のアルベルトの診療所に薬を届けに行って、一時間くらい滞在したのち帰ったそうです。しかし、その後行方が知れず……」

「そういうことは今までにもあったか?」

「いいえ。あの子はキチンとした子で、黙っていなくなったり、ましてや夜に帰らないなんてことは今までありませんでした。昨夜は知り合いや商業組合、町の警邏隊で夜通し探しましたが、結局見つからないまま……」

トマスは言葉を詰まらせた。
おばあ様は駆け寄ってトマスを励まし、ダリオンは腕を組んで何かを考えている。
一体、セドリックはどうしたんだろう?
これが大人なら二、三日留守にしてもそこまで心配しないだろうけど、彼はまだ十歳。
何かあったとしか思えない。
トマスとケンカしたとか、自発的に家を出たのでないのなら尚更だ。
もしかすると……連絡出来る状況ではな……い、のかしら?
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