廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
地震か地割れかとも思える音は、どんどん大きくなってこちらに近づいて来る。
そして、一瞬消えたと思った直後、雷が落ちたような爆音になった。
メキメキと木が割れる音と破壊音が入り混じり、もうなにが起こっているのかさっぱりわからない。
また音の中には逃げ惑う男の悲鳴も聞こえ、まるで地獄絵図のようである……と想像した。

「ちょっと、閣下!閣下!樽まで壊れてしまいますよ?」

ランスの声が小さく聞こえたと同時に、樽の蓋が開き、光と共に美しい蒼い瞳が私を覗き込んだ。

「ルキア!」

それは精悍な顔にびっしょりと汗をかいた、レグナントの大英雄だった。
いつもの無表情ではなく必死の形相で私の名を呼ぶダリオン。
彼は樽の中から私を救い出すと、縛っていた縄を素早く解いた。

「ダ、ダリオン様っ!あの、私……」

なにから言えばいいかわからない。
上手く立ち回るようにと言われていたのにもかかわらず、自分勝手に動き回り、余計な仕事を増やしてしまった。
助けてもらった安堵感とわき出てくる後悔。
上手く言葉に出来ずにいると、ダリオンが言った。

「なにも言わなくていい。無事で良かった……」

ダリオンは力を加減しつつ、私をギュッと抱き締めた。
その腕の中はとても暖かくて……でも、少し震えていて。
改めて、心配をかけてしまったことを反省した。

「ルキア様っ!ああ、良かったです!」

すぐ後ろから声がして、振り向くとローリーが兵士に助けられたところだった。
彼女の腕や足には縄の後が残っていたけれど、他に怪我はない。
安心して辺りを見回すと、今度は他の樽から助け出されたセドリックを見つけた。
ランスに抱えられたセドリックは、ぐったりしていて意識が無い。

「セドリック様!?ランスさん、セドリック様は無事なの!?」

「大丈夫。少し脱水状態のようだけど、ちゃんと息をしているよ。今、兵士にイエーレン先生を呼びに行かせたからね!」

ランスは明るくウインクをした。
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