廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
一石二鳥であるこの提案を、二つ返事で受けようとしたけれど……少しだけ迷いもある。
たとえ一時でも、大好きなおばあ様やエレナたち、それに……ダリオンに会えなくなってしまう。
それが寂しかった。

「ルキア、そうなさいな」

「おばあ様……」

「せっかく本当のお父様と出会えたのだから、もっと話さなくてはダメよ。あなたの知らないお母様のこと、シルヴェスター陛下の知らないお母様のこと。二人の思い出を擦り合わせて、彼女が生きた証を繋ぎ合わせてあげなさい」

おばあ様は微笑むと、幸せそうに胸に手を当てた。
たぶん、ディミトリ様のことを思い出しているのだ。

「私たちはここであなたの帰りを待っているわ。みんなもう、ルキア無しじゃつまらなくなっているんですもの!ね?」

突然話を振られたダリオンは、表情を変えなかった。
でも、ゆっくりこちらに顔を向けて言ったのである。

「……待っている」

相変わらずぶっきらぼうで感情は見えない。
だけど、彼が決して嘘を言葉にする人でないことを知っている。
引っ込んだ涙が、また溢れ出そうとするのを必死で押さえ込むと、私はみんなに言った。

「ユグリス殿下、シルヴェスター陛下、私の気持ちを尊重して下さってありがとうございます。おばあ様とダリオン様も暖かいお言葉感謝します」

「では、決定で構わないな?」

ユグリス王子の言葉に素直に頷くと、私は窓の外に目を向けた。
ここからはロダンの景色がよく見える。
石畳の路、曲がりくねった路地。
一定間隔で並ぶ街路樹のそよそよと揺れる様。

ーーまた、この景色を見に帰ってくる……きっと。
少しの哀愁と大きな希望を胸に秘め、私は心の中でそう決意した。
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