廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「迷う?子供でも本宅と別宅の区別くらいつくでしょう?」

「あ、はい。でも、私、ここに来て間もないので、方向もよくわからなくて……」

「そう、まぁいいわ。今回だけは大目にみましょう。すぐに本宅へ帰りなさい。そして、二度とここに入らないように。次は……ありませんよ」

脅しのような言葉に、一瞬身がすくむ。
だけど、ここですぐ立ち去ってしまえば、もう機会は訪れない。
私は必死できっかけを探した。
あらゆる五感を総動員させると、ふと、彷徨わせた視線が何かを捉えた。
それは、このクラシカルな室内には少し場違いなモノである。

「あ、あのっ!カトレア様は、お芝居が好きなのですか?」

私の視線の先には、何枚もの紙の束が積み重なっている。
華やかに着飾った令嬢の絵や、老王が鋭い目付きで玉座に腰掛けている絵。
現代で言うところの演劇のチラシがたくさんあったのだ。

「……関係ないでしょう?早く出て行きなさい」

カトレア様は抑揚なく言ったけど、言葉のなかに感情の揺れが見えた。
どんな感情かはわからないけど、私の質問がカトレア様の心の核心に触れたのは間違いない。
だけど、カトレア様の表情は固く、これ以上、会話をする気はないようだ。
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