廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
そうして、物語はどんどん佳境へと進み、私のお芝居にも熱が入る。

公爵や王女、子どもやメイド。
敵国の将軍や宰相。
多彩な登場人物を一心不乱に演じたけど、カトレア様がいる部屋には何の変化も感じられない。
窓枠一枚隔てるその向こうで、観客がどんな表情をしているのか……顔色を窺えないことが、こんなに不安だと感じたのは初めてだった。

楽しんで貰えているのかしら。

それが気がかりだったけれど、ここで心配をしている余裕なんてない。
お芝居好きのカトレア様なら、心ここに在らずの演技なんて、たぶんバレバレだ。
そう思うと、不安な気持ちも、少しの緊張もふっとんでいった。

『私は生きるわ!この辺境の自由な大地で、あなたと共に!』

最後の台詞を言い終わると、私は別館に目を向ける。
相変わらず、そこからは物音一つ聞こえない。
お芝居の余韻と相まって、中庭は怖いくらい静けさに包まれた。
しかし、それを打ち破る者がいた。

「す、素晴らしいっ!」

セルジュである。
彼は中庭の植え込みの影から、感極まった様子で手を叩きながら立ち上がった。
それをきっかけに、エレナ、ローリー、ミレイユが私目掛けて突進してきた。

「ルキア様っ!とても素敵でしたわっ!」

目を輝かせたエレナが、真っ赤な顔をして言い、ローリーがそれに被せてくる。

「私、びっくりして腰が抜けました!だって、こんなにお可愛らしいルキア様から、しゃがれた声や野太い声が聞こえるなんて……一体どういう仕掛けなのですか?」

仕掛けは……ない。
正真正銘、私の声。
全ては演技なのよ……と、説明するのも面倒なので、えへへと微笑んでいると、ミレイユに抱きつかれた。
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