廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「何もかも素晴らしかったのですが、衣装があればもっと良くなりますわよ?次は絶対私の作る衣装でお芝居をして下さいませねっ!」

「……う、うん……」

前のめりで迫り来るミレイユに私はたじろいだ。
今回はカトレア様に聞かせるだけの劇なので、衣装は全く意味がない。
ミレイユはそれが不満だったらしい。

「約束ですわよっ!」

ものすごい剣幕で迫られ、私は必死に頷いた。
どんなヒラヒラを着せられるのか不安だけど……この様子だと断るほうが恐ろしい。

「カトレア様は聞いていたのでしょうか?」

セルジュがポツリと呟いた。

「……わからない。でも、今日がダメでも明日があるわ!幸い、セルジュが揃えてくれた物語はまだまだあるから。どんな物語でも何度でも演じるわよ」

そう。
元々、すぐに出て来てくれるなんて思ってない。
長期戦は覚悟の上だし、ロングラン上演はお手のものよ!
鼻息も荒く伝えると、セルジュたちは安心したように微笑んだ。
きっと彼らは心配していたのだ。
幼い私が、カトレア様の反応がないことに、落ち込んでいないかと。

「さぁ、また新しいお芝居の準備をしましょう!忙しくなるわよ」

私が言うと、全員頷いて本館へと引き返した。

しかし、そのすぐあと……。
別館の窓辺で、ゆっくり立ち上がる影があったことに、気付くものは誰もいなかった。
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