廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「そ、それにしても、ダリオン様はいつも冷静な方なのね。おばあ様と良く似ていて」

「え?あ、はい。とても優秀ですから。でも……」

エレナは困ったように言った。

「……ん?えっと……どうしたの?」

一時の逡巡の末、私は尋ねた。
言いにくそうなエレナに聞くのは躊躇われたけど、好奇心が勝ったのだ。

「昔はあんな風ではなかったと」

「あんな風って……」

ひょっとして、無表情の「仮面」のことかしら?
するとエレナは、一生懸命言葉を選びながら慎重に語った。

「ダリオン様は、エレウス様や奥様そしてディミトリ様が健在だった頃は、とても良く笑う方だったと……セルジュ様が仰っていました」

「そうなの!?」

「ええ。しかし、皆様に御不幸があってから、感情を出さないようになったそうです」

次第に尻すぼみになるエレナの声が、もう取り戻せないあの頃を偲ばせる。
家族に囲まれて楽しそうに笑うダリオン……ちょっと今の姿からは想像がつかない。
しかしその時。
私の頭の中には、推し俳優ダニエルが出演した映画が突如再演された。
家族の絆と再生を描く感動作で、主演はダニエル。
彼の微笑みがラストシーンを飾るその映画は、ダニエル・ライトの出世作となったのである。
それを思い出すと、微笑むダリオンの想像は簡単につき、またその破壊力に悶絶した。
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