廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
「次男は確か、セドリック・イエーレンではなくて?十歳で薬草学の学位をとった天才だと聞きましたよ」

「いやいや。本人は好きで薬草学の本を読んでいただけで、天才とは程遠いですよ」

「謙遜しなくていいわ。天才少年なんて、ルキアの話相手に相応しいじゃない、ね?」

おばあ様はいい笑顔を見せたけど、私の笑顔はひきつった。
だって、そんな天才くんと何を話せと言うのでしょうかっ!
頭の悪さが露見して、バカにされるのがオチだと思うわ。

「きっと仲良くなれますよ……あ、話をすればなんとやら、だ。おい、セディ!」

角を曲がったトマスは、前方に向かって叫ぶ。
彼の見つめる場所には、艶やかな銀髪の少年が、木箱に入った沢山の人形を抱えて立っていた。

「父様……あっ!」

少年はトマスから視線を滑らせると、おばあ様と私を見て、さっと木箱を置く。
そして、軽やかにお辞儀をした。

「こんにちは!カトレア・エスカーダ様ですね?そして、ルキア様。僕は、セドリック・イエーレンです」

流れる銀髪がフワリと揺れた。
年は私とそう変わらないのに、物腰がとても落ち着いている。
おばあ様も感心したように言った。

「とても礼儀正しい子ね。トマス」

「ありがとうございます。セディ、ルキア様のお相手を頼むぞ。失礼のないようにな」

「もちろんです!僕、楽しみにしていたんですから!」

そう言うと、セドリックは溢れるような笑みをこちらに向けた。
あまりの眩しさに目が眩みそう……しかしっ!それでは、エスカーダ家の者としての面子が立たないわっ。

「まぁ、嬉しい。セドリック様、本日はよろしくお願いいたします!」

私は一歩前に出て、堂々と胸を張った。
しかし、すぐにそれを後悔した。

「ええ、可愛いレディ。あなたのお気に召すままに」

セドリックは優雅に私の手を取ると、ごくごく自然に甲に口づけた!
なに……この……未体験ゾーン……。
前世でも、こんなシーンは映画でしか見たことがない。
必死で淑女の演技を続行しようとしたけれど、どうやら表情は固かったらしい。
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