廃屋の捨てられ姫は、敵国のワケあり公爵家で予想外に愛されています
2、馬車の中で

晩餐会の行われる日の夜、おばあ様とダリオンと私は、王宮へと向かうべく馬車に乗り込んでいた。
その馬車の中では、龍と虎が目に見えない物騒なオーラを醸し出している。
目の前に座った龍(おばあ様)は穏やかに私を見ては目を細め、真横の虎(ダリオン)は窓の外を見つめたまま微動だにしない。
激しくやり合うわけではないから、最初は安心したけれど、暫く馬車に乗っていると恐ろしく不穏な空気が充満してくる。
ああ、早く!
なんでもいいから早く王宮についてー!
そう何度も何度も願っていると、やがて馬車が止まった。

「ルキア、見てご覧なさい。ここがレグナント中心部、ルミナリエス王宮門よ」

おばあ様の声に窓の外を見ると、石の巨大要塞のような門が開く所だった。

「本で読んだとおりですね!町の道を迷路のように造り、狭い道に追い込んで、まず敵の先陣を撹乱。第一の関所で敵の二陣を削り、第二の関所で本隊の数を減らす。すると、ここ、第三の関所王宮門へと辿り着く頃には、敵兵の半数は壊滅……という良く出来た要塞で……」

「お前!それ……」

「……えっ?」

突然肩を掴まれ、驚いて隣を見た。
すると、ダリオンが目を見開いて私を見ているではないか!
一体なに?私、何かしましたか!?
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