堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
 ジルベルトはエレオノーラの右手をとった。その手を彼女の顔の高さにまでゆっくりと持ち上げると、彼女に見せつけるかのようにその甲に唇を落とす。しかもそのとき、じっとエレオノーラの瞳を見つめていた。目が合う。

「エレン。あなたの気持ちを聞かせて欲しい」

「私は……」
 と言いかけて、エレオノーラ自身はそれ以上言葉を紡ぎ出すことができない。
 ジルベルトがじっと彼女を見つめていた。次の言葉を待っている。何か言わなくては、という思い。

「私は諜報部の潜入班としては失格ですね」
 エレオノーラは自嘲気味な笑みを浮かべた。
「私は、ジル様が好きです。多分」

「多分?」
 最後の一言が気になるところ。

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