溺愛結婚は突然に〜ホテル王から注がれる、溢れるほどの愛〜



「And the player wins(プレイヤーの勝利です)」


「……あ、勝った」


「おぉ、おめでとう」


「ありがとうございます」



思いがけない勝利に驚きつつもチップを受け取ると、ディーラーにもうゲームを辞めることを伝えて現金に戻してもらう。



「もう辞めんの?」


「元々時間を潰しに来ただけなので。それにカジノって初めてだから、あんまり落ち着かなくて」


「へぇ。初めてなのにバカラのルール知ってるんだ?」


「……まぁ、カジノのゲームの中なら他のゲームみたいにややこしくなくて簡単だし。ラスベガスに来る機会は多いので、自然と」


「そっか。この後は?どこか行くの?」


「さぁ、決めてません。でも部屋に戻っても両親に捕まるだけだし、バーにでも行こうかなって」


「ふーん」



会話しているうちに現金を受け取り、ディーラーにお礼を告げてそこから何枚かお札を渡した。


鞄を持ってその場を立ち去ろうとした時。



「時間あるなら、ちょっと付き合ってよ」


「……え?」



掴まれた腕に足を止める。


座っていた時は気付かなかったけど、立ち上がって隣に並んだ彼はとても背が高く、私とは頭ひとつ分違うようだ。


その端正な顔立ちを見上げるようにしつつ、彼の言葉の意味を考える。



「……付き合うって、どこに」


「ご両親に見つかったら困るんだろ?なら、俺が良いところに連れてってやるよ。変なことはしないし、二人きりにもならない。でもそこなら多分、ご両親には見つかんないしバーもあるから酒も飲める。すぐそこだし、時間も潰せるけど。……どう?」



どう?って言われても……。


初対面で、そんなことを言われても困る。


それを断ろうと思っていた矢先、彼は思い出したかのように続けた。



「そうそう、さっきここに入る時、誰か探してるみたいに黒服が走ってたよ」



ご両親の遣いなんじゃないか?


私をからかうような言葉に、グッと手を握る。

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