オトメは温和に愛されたい
 小さい頃は、カナ(にい)も交えて三人で一緒にお風呂に入ったことだって、ある。
 でも……小学生になってからは温和(はるまさ)とはそいうこと、一切しなくなっていて。

 だからかな。

 久々に見る温和(はるまさ)体軀(からだつき)が、思った以上に()()であることに、物凄く驚いた。

「は、ハル(にい)、お願いっ。――ちょっと目のやり場に困るから……申し訳ないけど向こう行って?」

 冷水を被ったこともあって、身体が冷えて凍えそう。
 それなのに顔だけはやけに熱を持って感じられて……。

 私は温和(はるまさ)を異性として意識してしまっているのをバレたくなくて、目を逸らしながらしどろもどろにそう言った。
 と、「目に毒なのはお前もだ……」と、温和(はるまさ)にしてはどこか歯切れの悪い物言いで小さく吐き捨てられた。
 寒いからかな。そう言った、温和(はるまさ)の声も心持ち震えている気がした。

 温和(はるまさ)の言葉にきょとんとしながら、何の気なしに自分を見た私は、一気に青ざめて前のめりに縮こまる。
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