オトメは温和に愛されたい
***

 温和(はるまさ)鶴見(つるみ)先生のお見舞いを打診された私は、温和(はるまさ)と下駄箱で別れてすぐ、保健室に行ってみた。

「今、大丈夫?」

 開け放たれたままのドアを控えめにノックして、代わりのように扉前に引かれた薄桃色のカーテンを少し開けて声をかけたら、パソコンから顔を上げた逢地先生(なっちゃん)が「もちろん」と返してくれる。

 前にも一度座ったことのある保健室内のテーブル前に向かい合わせに座って、鶴見先生の事をそれとなく話題に上げたら、なっちゃんは今日も彼のお見舞いに行くつもりだと教えてくれて。

「私も後で霧島(きりしま)先生と一緒に伺おうかと思ってて……」
 そう告げたら、
「は・る・ま・さ、でしょ?」
 と小声でたしなめられてしまった。
「せっかく職場公認になったんですもの。放課後ぐらいは、ね?」
 ニコッと笑ってそう言うなっちゃんに、私は照れつつも弱ってしまう。

 私、そんなに器用なほうではないから、職場ではなるべく「霧島先生」を通していないと、ついうっかり子供たちの前でも「温和(はるまさ)」って呼んでしまいそうなの。
 なっちゃんに戸惑いながらそう言ったら、「あら、でも入籍したらオトちゃんも"霧島先生”になっちゃうんじゃなくって?」と微笑まれた。

 ああ、そう。
 その問題がね、ありました。

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