逆プロポーズした恋の顛末
(立て込んでいてって……仕事?)
彼女に遭遇していなければ、額面通りに受け取って、『わかった』のひと言で済んだだろう。
けれど、昨日の今日。つい疑ってしまう。
それでも、本当に仕事なのか、なんて訊けるはずもない。
答えを待っている幸生に向き直り、余計な感情は横に置いておき、無難な説明をした。
「パパ、お仕事で帰るのが遅くなるんだって。ごめんねって」
「ええーっ!?」
「晩ごはんも間に合わないかもしれないんだって」
「……じゃあ、絵本も読んでくれないの?」
見るからにがっかりする幸生は、ちょっと泣きそうだ。
「かもしれない。でも、今日はダメでも、明日があるでしょ? まだまだパパと一緒にいられるし」
「……うん」
渋々頷いたものの、このままだとモヤモヤした気持ちを引きずってしまうだろう。
わたしも幸生も気分転換が必要だ。
そう思い立ち、クレヨンでぐりぐりとせっかく描いた魚を塗りつぶしている幸生に、提案してみた。
「ね、幸生。お昼ごはん食べたら、探検に行こうか?」