逆プロポーズした恋の顛末
身体のあちこち痛いところはあるが、日常生活を送れないほどではないと思い、慌てて必要ないと言おうとしたが、尽にきっぱり「医者としての判断だ」と言われた。
「今日、明日は入院して経過を観察する。そのあと、問題がなければ退院。退院しても、大丈夫というわけではない。打撲の痛みが出るだろうし、後から、脳震盪の症状が出ることもある。不安定要素を抱えたまま律と幸生を置いて、俺が仕事に集中できると思うか?」
「それは……」
「律は大丈夫でも、俺が大丈夫じゃない。医者としての判断ミスで、律と幸生に何かあったら、一生後悔する。医者も辞めるかもしれない」
真面目な尽の表情から、単なる脅しているだけではないとわかる。
「……わかったわ」
大きく頷いてみせたが、尽は疑うように覗き込んで来た。
「本当にわかってんのかよ? 俺がどんだけ心配したか」
「……わかってるわよ」
近づいた尽の顔が、さらに近づいて、唇が重なる……寸前、ノックの音と同時にドアが開いた。
「患者を襲うのはやめていただけますかー? 立見先生」