キミは掴めない。


「んもう、とぼけなくていいから早く行こ!」

「はいはい。そう怒んなよ、美瑚ちゃん」


わたしだって学習している。

清瀬くんのことだ。
どうせ、わたしが困るのを見て楽しんでるだけ。


わかっているのに阻止できないのが悔しいところだけど。



「おー、やっと来たな。どうせ清瀬が月島困らせることしてたんだろ?もう昼休み終わっちまうぞ」


職員室まで行くと、案の定清瀬くんはアキちゃんに言われていた。


ったく、なんて言ってため息を吐くアキちゃんだけど、本気で怒っているわけではないみたい。


それもそうだ。
だってアキちゃんは優しいから。


わたしだって一度も怒られたことはないし、そもそも怒ってるところ自体を見たことがない。


ふふっと笑みが溢れた直後、コツンと頭を小突かれた。


「なーに笑ってんだよ」

そんなことをする人は、今隣にいる清瀬くんしかいないわけで。


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