赤い雫のワルツ


 お陰でご主人様が吸血鬼であるという記憶を女性には残さずに、領主としてここでやっていけるように陰ながら支えている。



「本当にカレロアが私の元へ来てくれて、色々と助かるよ」



「本来は血を吸われるだけでしたのにね」




 優しい眼差しで見つめられると、何故か口調が強気になってしまう。



 この胸の高鳴りも、体温の上昇も、どの書物にも書かれていない。



 原因はきっと吸血鬼の住む屋敷に住み始めてしまったから、というなんとも根拠のないもので納得させている。



「今日はやけに血を吸われるのに拘るな」


「別に拘ってはないです。ここに本来いるべきでない人間という私がいるのに、少し疑問を抱いただけです」



 そう。単純に疑問を抱いただけ。



 単純にそう思いたい……だけ。






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