赤い雫のワルツ



 この胸の苦しみは、よく分からないけれど。



 ぎゅっと小さく胸元を握りしめていると、飲み干したグラスを机に置くと、ご主人様がこちらへ近付いてくる。




「いつにも増して、不機嫌だ。何かあったのか」


「別に。手を煩わせるご主人様だなと、そう思っているだけですよ」


「……それは、すまない」



 小さく落ち込むご主人様は、叱られて尻尾を下げる犬のように愛くるしい。



 そんな姿に、不覚にも胸が締め付けられた。



 落ち込ませたくて、困らせたくて言っているわけではないのだ。



 自分の中にある、この感情がよく分からなくて、少し苛立ってしまう。







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