赤い雫のワルツ



 先程までご主人様に血を吸われていた女性の呼吸が落ち着きを取り戻すと、ご主人様は安心した表情を浮かべた。





 そんな表情、知りもしない女性に向けるなんて。






 ……あれ。今、私何を思って?


 同情してしまうくらい優しいご主人様だもの、呼吸が安定したことに安心するのは当たり前だろう。



 そんなのいつもの事だ、そんな顔もいつも見ているのだ。



 私は向けてくれない、その表情を。




「カレロア?」



 ぼけっとしていたのか、いつの間にかご主人様の顔はすぐ目の前にあって、反射的にビクリと反応してしまう。






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