悪役令嬢ですが死亡フラグ回避のために聖女になって権力を行使しようと思います
「レティっ! ただいま。元気にしてたかい?」

 グレンお兄ちゃんが塩を作る魔法を編み出してから五日後の昼過ぎ。

 城門の前でカルロさんが帰ってくるのを待っていると、両手いっぱいに私へのお土産をかかえて、彼がニコニコ顔で馬車から降りてきた。
 塩の仕入れ交渉のため、各地を巡る旅に出て、やっと帰ってきたのだ。
 私と同じく綺麗な銀髪で短い髪の美形さんだ。

「会いたかったよ。ケガはなかったかい? また無茶をしてなかったかい?」

 かかえていた私へのプレゼント用らしき荷物をボトボト落としながらも、私を抱き上げる。
 落とした荷物の中身は無事なのだろうかと、いらぬ心配をしてしまう。

「お前、その親馬鹿ぶりはなんとかならないのか」

 一緒に馬車に乗っていたカルロさんの親友で商人のセクターさんにジト目で突っ込まれる。
 金髪碧眼のハンサムな男性だ。

「親馬鹿とは心外だ」

 カルロさんは急に真面目な顔でセクターさんに返す。

「お前みたいのを親馬鹿と言わないで、誰のことを親馬鹿と言うんだ?」

 急に真顔で返されて、一瞬たじろいだものの、セクターさんも負けじと言い返した。

「なにを言っている。私をそこらへんの親馬鹿と一緒にしないでほしい。
 私のレティへの愛はそれ以上だ」

 無駄にイケメンの決め顔でセクターさんに抗議するカルロさん。
 第三者視点から見るとはっきり言って二枚目なのに残念キャラである。

「パパおかえりなさいっ!」

 私はいつものレティらしく、抱きついた。

「ただいま。レティ。いい子にしていたかい?」

「うん! いつも通りだったよ!」

「ってことはお前それ、悪い子だったってことじゃねーか?」

 得意げに言う私にセクターさんが突っ込んできた。

「セクターさん、それひどい」

 私はむぅっと口を尖(とが)らせる。
 どうせ普段の行いが悪いですよーだ。

「そうだぞ! セクター。レティはお転婆なところを含めてかわいいんだ!」

 カルロさんが力強く抗議してくれる。

「やっぱりお前は親馬鹿だな。目に入れても痛くないとか言いそうだ」

 セクターさんが頭をポリポリかきながら言った。

「なにを言っているんだ。レティが目に入るわけがないだろう」

 真顔で答えるパパ。
 ……うん。パパはちょっと天然かもしれない。
 にしてもうれしいなパパが帰ってきてくれた。一ヶ月ぶりだ。
 今日は絵本を読んでもらって、あとちゃんと勉強をがんばったことを言って!と、考えて私ははたとその動きを止める。

「ん? どうしたんだいレティ」

 パパが私の顔を覗き込んで言う。

「あ、うん。ごめんなんでもないよ! パパ帰ってきてうれしいっ!」

 私はごまかすように抱きついた。

 パパが帰ってきた途端、紗良の記憶を思い出す前の私に無意識に戻ってしまった。

「ところでカルロ様。塩の方は……?」

 ラディウス様が聞くと、カルロさんが首を横に振った。
 ん?──どうしよう。私の中でパパとカルロさんが混在している。

「いや、ダメだった。どこも塩不足でうちに回すほどの余裕はないらしい」

 そう言ってうつむいてしまう。

「それはよかったです」

 微笑むラディウス様。その言葉にカルロさんとセクターさんが顔を見合わせるのだった。





「本当か!? それはすごいじゃないか!?」

 カルロさんの帰宅後、私たちは屋敷の居間に集まり、お茶していた。
 ラディウス様がグレンお兄ちゃんの塩を取り出す魔法を伝えると、セクターさんがうれしそうに声をあげた。
 カルロさんも魔法でできた塩をまじまじと見ている。

「これはすごい。純度もかなりいいのでは?」

 手に取って、サラサラの塩に感心していた。
 グレンお兄ちゃんに塩を取り出す魔法を教わった後、私はグレンお兄ちゃんに頼んで、魔法は全部グレンお兄ちゃんが考えたことにしてもらった。
 なるべく転生者と疑われるようなことは隠さないと。

「この魔法は比較的簡単なので、子どもでも教えればできるでしょう。
 領土で使う塩だけなら手の空いている子どもたちが担当すれば補えると思います」

 ラディウス様が告げる。

「ぜひその子どもに会いたいですね。よくそのようなことを思いつきましたね」

 ミレイユがメガネをくいっと直しながら言う。

「とにかく、その魔法のことを詳しく聞くぞ、カルロ」

 セクターさんが慌てた様子でカルロさんの手を取る。

「ええ!? 私はレティと!」

 抗議するパパ。

「アホかお前っ! どれだけの海水の量でできるかとか、ちゃんと確認する必要があるだろう!?」

 パパはセクターさんに怒られて、ずるずると引きずられていく。
 ……ちぇ。もうちょっとパパと一緒にいたかったのに。そこまで考えて。ハッとする。

 いや、パパといっても他人だよ?

 私は二十四歳で彼と年も近いはずなのに。

 もしかして私……幼児化してる? 

 私は不安になりぎゅっと手を握りしめた。

< 13 / 13 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:7

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

偽聖女と虐げられた公爵令嬢は二度目の人生は復讐に生きる
  • 書籍化作品
表紙を見る 表紙を閉じる
【秋田書店様 どこでもヤングチャンピオン様にてコミカライズ連載中】 「婚約破棄だ!!!」  好きな男性と無理矢理引き離されて、婚約したはずだった第一王子に公爵令嬢リシェルは一方的に婚約を破棄される。  無実の罪を押し付けられて。  リシェルには本来別の婚約者がいた。  心に決めた婚約者が。  けれど少女リシェルに、「聖女」の神託が降り、彼女の人生の歯車は大きく狂ってしまう。  無理矢理愛しい人との婚約を解消され第一王子ガルシャの婚約者とされてしまうのだ。  それなのに現実は残酷で。  リシェルは聖女の力を使えず、聖女の力が使える少女マリアが現れてしまった。  リシェルは偽聖女の烙印を押され、理不尽な扱いを受けることになるのだ。  愛しい人を聖女マリアに奪われ。  マリアと王子の失策を背負わされ拷問に近い暴力の末。  親しい人たちとともにリシェルは断頭台へと送られ殺される。  罪状らしい罪状のないまま執行される死刑に。  リシェルは誓う。  悪魔に魂を売ってでも怨霊となり末代まで祟をーーと。 【2022年 7月ベリーズファンタジー様で書籍発売予定!よろしくお願いいたします! 一章のみ掲載です】
聖女じゃないと見捨てておいて今さら助けてとか無理なので、どうぞ放っておいてください!
  • 書籍化作品
[原題]聖女じゃないと見捨てておいて今さら助けてとか無理なので、どうぞ放っておいてください!~婚約破棄から始まる異世界もふもふスローライフ~

総文字数/25,326

ファンタジー20ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「ごめん、クミ!婚約を取り消してほしい!俺は真実の愛に目覚めたんだ!!」  会社のバーベキュー会場で、私はいきなり婚約を破棄された。  彼氏の隣に居たのは会社の後輩で可愛い金髪美少女キリカ。  彼女は私に残業を嘘の理由でおしつけていて、それを私に怒られた腹いせに彼氏をとったらしい。  それだけでも、悲惨だったのに、なぜかその後異世界に、私、カズヤ、キリカの三人で召喚されて、聖女のキリカと勇者のカズヤ以外はいらない、お前みたいな職なし、ゴミスキル持ちは死ねと、召喚した神官達に私は魔物の住む魔の森に捨てられた。  いや、もう勘弁してください。  ペットになってくれたフェンリル3匹と私を守ってくれようとした神官セルヴァさんと絶対この魔の森で生き抜いてみせるんだから。  神スキル「指定」と、ラッキーで手に入れた「ネット通販」と「遺跡の管理者」の称号を駆使して魔の森に自分の理想の街を作ってやる!  って、日本の調味料で作ったご飯目当てでゴールデンドラゴンやら、敵国兵やらなぜか仲間になっちゃうんですけど!?  浮気してた二人はなぜか勝手に揉めてるし!?  もう私は関係ないので放っておいてください!!!!切実に!!!  ★ベリーズファンタジー様より10月書籍発売予定のため一章のみの掲載となります★

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop