悪役令嬢ですが死亡フラグ回避のために聖女になって権力を行使しようと思います
「おや、お嬢様。読書ですか。偉いですね」

 神殿の本がずらりと立ち並ぶ図書室で魔法の本を読みあさる私に、神官長ラディウス様が話しかけてきた。
 長い青髪で長身のイケメンな男性だ。
 年齢は二十代くらい?
 カルロさんと同じくらいと言っていた気がする。

「うん! 魔法の勉強をしようと思って!」

 私はこれまでのレティらしく、元気いっぱいに答えた。中身が違うのバレると嫌だし。

「それはそれは。勉強嫌いのお嬢様が熱心にお勉強をしているとは、きっとカルロ様が喜びますよ」

 ラディウス様が微笑みながら言う。
 ……たしかに。紗良の記憶が戻る前の私は、魔法? なにそれおいしいの?
 と外で遊び回っていた気がする。
 よく魔法を教えてくれる家庭教師の魔導士に怒られていたかも。
 お転婆すぎてついていけませんっと、三人くらいやめてしまって、今ではこの領地のおかかえ魔導士のミレイユに教わっている。

「お嬢様はなんの魔法を覚えたいのですか?」

 ラディウス様が私の読んでいた本を覗いてきた。

「えーっとね! 火の魔法!」

 やっぱり塩を作るなら火だよ火!
 海水を釜焚きして塩だけを取り出すんだ。

「……お嬢様。お嬢様は氷系統の魔法しか使えませんよ?」

 私がうふふと満悦していると無情な現実を告げるラディウス様。

「えええええ。じゃあ私、氷魔法しか使えないの?」

「ええ、そうなりますね。ひとりの人間が使える属性は基本ひとつです」

 ラディウス様がにこやかに笑いながら言う。そうだ。このゲーム、キャラ各自に属性があってひとり一個だった。
 ヒロインだけが全属性の魔法を使えて、ヒロインすごい!とされるゲームだった!

「じゃ、じゃあ、私の〝火の魔法で大量に塩を作ろう計画〟がダメになっちゃう」

 私がそう言うと、ラディウス様は、なるほどといったそぶりで手を顎に添えて考えた。

「カルロ様のお役に立ちたいということですか。
 お嬢様は本当にお父様思いですね。きっと喜ばれますよ」

 そう言ってラディウス様がイイコイイコと頭をなでてくれた。
 うん。思いっきり子ども扱いされている。

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