政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
やっと二人で来た温泉旅行の一幕なんて、心の中で私は思っているとは壱都さんはきっと知らない。

「温泉まんじゅうを買って帰るのは定番って言ってました」

「誰が?」

「町子さんが……」

名前を言ってから、私は口をつぐんだ。
楽しい温泉旅行なのに暗い気持ちにはなりたくない。

「壱都さん。いろいろお土産を見ましょう」

「ああ」

急に話題を変えてしまったけれど、壱都さんは私に合わせてくれた。

「朱加里。その温泉まんじゅう、誰にあげるつもりなんだ?」

「白河のお祖父さんにあげようと思っています」

壱都さんが頬をひきつらせた。

「いや、いらない。率先して会いに行きたいような相手じゃないよな?」

「でも、旅行にきたんですから、お土産を買わないと」

私の手から温泉まんじゅうを奪った。

「なにするんですか」

「それはこっちのセリフだ。呼ばれた時だけ会いに行けば十分な相手だ」

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