政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
犬猿の仲だけど、結婚。
お互いの利益になっても損はなし。
つまり、政略結婚ってこと?
ドラマみたいな話をドキドキしながら聞いていた。
なんて答えるのだろうと壱都さんの返事を待っていたのは私だけじゃない。
その場にいた全員が彼の返事を待っていた。
それなのに壱都さんは柔らかく微笑むだけで、返事はしなかった。
無言のお断りだと私は察したけど、芙由江さんも紗耶香さんも諦めきれないようだった。
それにしても、微笑みだけで人を黙らせることができるなんて。
これは―――なかなかの手練(てだ)れ。
芙由江さんがまだなにか話をしたそうにしていたけれど、壱都さんはそれを遮り、思い出したかのように言った。

「ああ、そうだ。井垣会長の部屋にハンカチを忘れてきてしまったみたいだから、とってきてもらえるかな?」

壱都さんが私の方を見ていたので、私に頼んでいるような形になってしまった。

「わかりました」

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