政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~
ふっとさっきのメールが頭をよぎり、なぜかクレソンが苦く感じた。
俺を婚約者だとわかっているよな?
まさか、形だけの婚約者だと思われているとか?
フランス語の新聞を読もうと手にしていたが、内容がまったく頭に入ってこなかった。

「壱都さん。日程がわかりましたよ」

朝食が終わるという頃に樫村がやってきて、メモ紙を渡してくれた。

「ありがとう。樫村」

俺は彼女の留学日程を難なく手に入れ、悪い顔をした。
メールの仕返しをしようと思っていた。
突然俺が現れたら、驚くだろうな。
樫村は『またよからぬことを企んでいるのでは……』という目で俺を見ていた。
失礼な。
これは婚約者に会いたいという純粋な気持ちだ。
機嫌のいい俺を見て、樫村は言った。

「おとなげないことをしないでくださいよ」

すでに俺がろくでもないことをすると思っているらしい。
失礼な奴だ。
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