蒼い炎
床に両膝と手をつく男は呆然とした様子を見せながら顔を上げる。見開かれた目はまるで今の状況を信じられないと言わんばかりで、俺を呆然と見上げている。
随分若いな。ステファナの両親ではない。ならばきょうだいか?いや、きょうだいなど同胞の間で聞いたことがない。ならば、この男はなんだ。
不意に鼻を突いたのは血の匂い。見れば男の両手は血が滲んでいる。酷く慌てたのか服装も髪も乱れ、額には汗が浮き出ている。
「…あ」
「何用だ。まさか、俺のことを知らないわけでもあるまい」
「…ッカタストロフィ殿ですか!!?」
急に我に返った男は立ち上がり、縋りついてくる。なんなんだ…。
それに、その名で呼ばれるのは気分が悪い。
「離せ」
「ッどうか、リリスをお助けください!!」
「離せと言うのが分からんか!」
肩を掴んで突き放す。だが、男は数歩で足を止め、その場に膝をつき、床に頭をこすり付けんばかりに、頭を下げる。
「どうか、どうかリリスを…」
…この男、何者だ。それに、リリスとかいうのも誰だ。
とりあえず、ステファナを連れ戻しに来た輩ではないらしい。そうと決まれば一刻も早くこいつを外に追い出すのみ。