蒼い炎

 どうする。この男、このまま返せばステファナのことを王に…。もし、そうなればステファナは…。
 …殺すか。そうすれば、ステファナを守れる。ここに留められる。
 大丈夫だ。1人程度、いなくなろうが下層のものならば騒ぎになろうとも、貴族でないんだ。消せばすべて…。
「お願いいたします。リリスは、王子の花嫁に…」
「…は?」
「ッリリスを救うには、あなた様の立場しかッ!!お願いいたします!!リリスを、ここに…」
「…待て、お前は、そのリリスとかいう者の…」
「ッ婚約者です。結婚目前に、王宮から使いが…。このままでは、リリスは王の花嫁に」
 泣き崩れる男は、ただお願いいたしますと蚊の鳴くような声を繰り返す。
 帰れと、言えばいいだけだ。言えば、終わる。…なのに、ステファナの言葉が返ってくる。花嫁の行く末を。その悲劇を。
 見ず知らずの他人だぞ。関わったこともない。都合のいい時だけ頼ってきたような奴だぞ。なのに、なぜ追い返すのをためらう。なぜ、帰れと言えない。
 危険すぎる。2度も花嫁を攫うだと?2度も王に逆らうのか。俺は…。それに、ここには、ステファナが、俺1人の問題では…。
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