蒼い炎
部屋から家具以外の不必要なものを運び出した頃にまたノックが聞こえてくる。念のため、ステファナを2階に留めたが、心配は無用だったようで、先ほどの男と連れられてきた女だ。
女の方は事情を聞いていなかったのか、かなり戸惑った様子だ。それに、着ているものも夜着。掻っ攫ってきたか。
「誰かに見られたか」
「いえ、誰にも」
「ならいい。…リリスとか言ったか。状況を分かっているのか」
名を呼べは驚き、首を横に振る。
「ッ…い、いえ…。キリル様が、急ぎ家を出るとおっしゃったので、何が何だか…」
「お前、キリルと言うのか」
そう言えば男の方の名を聞いていなかった。先ほどはそんな余裕もなかったから仕方なかったが。男の方も気づいたように慌てて居住まいを正す。
「ッはい、申し遅れました。キリルと申します。こちらがリリス。リリス、キミを王宮に行かせたくなった。私のわがままだ。すまない…」
「え…」
リリスは目を見開き、ゆっくりと首を横に振る。その顔は穏やかだ。
この様子なら、心配はないようだ。だが、とにかく話すことも多いだろう。