蒼い炎
「…捨てられたか」
にわかに信じがたいが、そう思わずにはいられない。
こんな幼子を人の世に送り、こちらへ連れ戻しても迎えに来ないのだ。随分罰当たりな親だ。
宝とも例えられる子を捨て置くなど、到底理解できない。
青年は少女を見下ろしていたが、やがて背を向け、部屋を出る。
部屋の外で待ち構えていた従者が深々と頭を下げる。銀色の髪を後ろへ流し、眼鏡の奥から赤い瞳を細めている。知的な雰囲気を漂わせる従者は、ゆっくりと頭を上げる。視線がほぼ同じ高さでぶつかる。
「キリル、下層の者たちは」
「名乗り上げる者はおりません」
「そうか…」
青年はこちらに戻ってから名乗り上げる親が現れないことに苛立って、こちらから探し始めた。だが、親は見つからない。
「やはり、捨てられたと見て間違いなさそうだな」
「テオファニス様、いかがなさいますか」
すぐに判断を求めてくる従者を睨みつつ、青年は足を進める。その2歩後ろを守って従者は続く。