蒼い炎

「…これは」
「どういう状況だ」
 口を濁した医者は言いづらそうに口ごもる。
 眠ってから3時間ほどで医者が到着した。医者をファナの部屋に通し、診察させたが終始険しい顔を崩さない。
 ベッドに寝かされたファナは身じろぎひとつせず眠り続けている。心なしか顔色が悪い。
「…この子に二度と能力は使わせない方がいい」
「代償が、あるんだな」
 我々の中には稀に能力持ちが生まれる。それは血筋と言うより素質の問題であり、使える能力は個体によって異なる。
 だが、1部の能力持ちには強大な影響力を放つ代わりに代償が自身に返る者がいる。
 治癒能力を持つ者に、その傾向は強い。
 医者は深く頷くと、悲しげな眼でファナを見る。
「この子は、傷を癒すのではなく、なかったことにしてしまうんだろう。その代償は、自身の時間を戻した分だけ差し出す。つまり、寿命を削る」
「待て、ジュミョウ?なんだそれは」
 思わず医者の言葉を遮る。
寿命、それは我々の世界では存在しない言葉だ。意味の分からないそれは、病気なのか。医者は言葉を選んでいるのか、なかなか口を開かない。そのわずかな時間さえももどかしかった。
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