蒼い炎

「寿命は、命の時間に限りがある生物の、命の長さを示す言葉だ。つまり、この子には命の時間に限りがある」
「なんだと」
 医者の言葉はにわかには信じられなかった。
 我々は老死と言うものがないはず。絶対的な死はあるにせよ、我々に寿命で死ぬなどという死があるなど聞いたことがない。
 なぜ、ファナには寿命があると宣告される…。
 ファナを見つけた時の状況を思い出す。飢餓状態で、死体の血肉さえも食らおうとしていた。俺が見つける前に、死者の血肉を口にしていたのか?その死の穢れを受けて寿命などというものに感染してしまったのか?
 いや、そんなはずはないだろう。もし、そんなことがあるのならばそれらは禁忌とされる。だが、死体の血肉を食らってはならないという禁忌は我々に存在はしないのだから。
「あんた、比較的新しい全身の傷が消えたんじゃないのか?」
 医者の言葉に反応が遅れるが、その通りだ。王子に連れて行かれてからの1か月間だけでなく、ここ50年で負った傷跡もすべてが消えていた。
< 85 / 143 >

この作品をシェア

pagetop