蒼い炎

 手を降ろす。もう、十分だろう。
「去れ。ここに貴殿の花嫁などいない」
「ッ…」
 苦虫を潰さんと言わんばかりの顔を浮かべた王子は、舌打ちし背を向ける。
「この周辺を探せ!」
 王子の命令に兵士どもは返事をし、屋敷から我先にと離れていく。
 ドクロとなった兵士は仲間の兵士たちによって回収されいく。彼らの睨みは、一身に受け、全てを受け止めた。彼らの怒りはもっともだ。彼の死は、必要がなかったはずのものなのだから。
 去っていく王子一行を見送り、屋敷の中へ戻る。
 客間のドアに隠れていたらしいステファナが駆け寄ってきて、抱き着いてくる。軽い彼女でさえ、酷く重く感じてしまう。だが、何とか肩を抱くことだけは出来た。
「テオファニス様、ごめんなさい。私のせいで…」
「構わん。…ステファナ、少し休みたい」
「ッお部屋までお供します」
「いや、客間でいい。…泣くなよ」
「え?」
 苦笑いを浮かべて、何とか客間まで体は引きずったが、限界だ。
 客間のソファーに倒れ込むと急速に意識が遠のいていく。
 ステファナが叫んでいるのが聞こえたが、その声さえもやがて消えた。
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