ディープ・アフェクション



先輩に手を引かれて歩くこと数分。

辿り着いたのは、駅前付近にある有名なパンケーキ屋さんだった。


平日の夕方でも、店内は賑わいを見せていた。女子が9割を埋めている空間でも先輩は臆する素振りを見せず、席に着くや否や「これひとつ」と、すぐにメニューを決めてオーダーを通していた。


数分後、運ばれてきたのは苺と生クリームをふんだんに使ったパンケーキだった。

どうやらこの店の看板メニューらしく「売り切れてなくてよかった」と微笑んだ先輩は、私にフォークとナイフが入っている容器を手渡してくる。

その動作に、きょとんと目を丸くしてしまう。



「え、……先輩、食べないんですか?」


てっきりこれは、先輩がひとりで食べるものだと思っていた。

だって「一緒に食べよう」とか、そういう話をしたわけじゃなかったしメニューを決める時に「どれがいい?」と聞かれたわけでもない。

恐る恐るそう尋ねた私に、先輩はにっこりと笑顔を浮かべて。



「うん。俺、甘い物あんまり好きじゃないんだよね」

「……」


返ってきた言葉に、面食らったなんてもんじゃなかった。
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