ディープ・アフェクション
“残していいよ”と言われたものの食べ物を粗末にする訳にもいかず、結局パンケーキは全て私ひとりで平らげた。
言わずもがなお腹はパンパンだし、甘いものを過剰摂取したせいで気分が悪い。
コンディション最悪のまま店を後にして、来た時と同じように指を絡ませるように手を取られた。
「里茉ちゃんてさ、門限ある?」
パンパンに膨らんだお腹を手の平で軽く撫でていると、ふいにそんな質問が投げかけられた。
ゆるく首を傾げる先輩を横目で見つつ「あー…」と歯切れが悪い声を出しながら、口を開いた。
「あんまり遅くなると親がうるさいかもです…」
真っ赤な嘘だった。
私の両親は放任主義もいいところで、いつも私が何時に帰ってこようが何も言わない。
なのに口を突いてそんな嘘が出てきてしまったのは、もうどうにもこうにもお腹が気持ち悪くて、仕方なかったから。
正直、今すぐ帰りたかった。
「そっか、じゃあ今日はこの辺で解散するか」
「……はい」
私の嘘に気づいていない先輩がにっこりと優しい笑みを向けてくる。罪悪感で胸がチクリと痛みながらも前言撤回する気になれず、その痛みを抱えながら小さく頷いた。
家の近くで足を止めて「ここでいいです」と言った私に先輩も倣うように足を止めた。
「もう近いの?家」
「はい、その電柱の向こうの黒い屋根の家なんで」
「ああ、あれか」
私が指さした方向を確認した先輩は此方に向き直って「じゃあ」と口を開いた。
てっきりそのまま踵を返すものだと思っていたから、先輩の手が此方に伸びてくる事は想定外だった。
伸びてきた手が後頭部に回る。
え?と思った時にはグイっと引き寄せられていて。
「、」
先輩の影が私の顔を覆ったと同時に、私の唇に先輩のそれが重なっていた。