ディープ・アフェクション



さっそくその日の放課後、私は先輩と落ち合い、帰路を共にしていた。


「どうする?なんか軽く食べて帰る?」

道路を挟んだ向こう側の歩道で散歩しているポメラニアンを見つめていると、ふいに前方から声が掛かった。

視線を前に戻すと、少し先を歩いていた先輩が此方を笑顔で振り返っている。

その笑顔に胸がチクリと痛むのを感じながらも、首を横に振った。


「いえ、今日はいいです」

「そ?あんま腹減ってない?」

「…まぁ、はい」

「あ。里茉ちゃん、こっち」

曖昧な返事とぎこちない笑顔を返した私に、先輩は次の瞬間 私の肩を抱くようにして自身に引き寄せた。

その直後、私たちの横を自転車が通り過ぎていくのを見た。


「ここら辺、自転車多いから里茉ちゃんそっち歩いてな」

「……」


先輩は、優しい。

今だってこうして危険を察知して、私をその危険から遠ざけるためにナチュラルに誘導してくれたし、いつも私を喜ばそうと頑張ってくれる。

すごく、優しい人なんだと思う。

一緒に居て楽しいし、話しやすいし、申し分ないほど良い人だとも思う。

じゃあ何がダメなの?って聞かれると、その原因は十中八九 先輩じゃなく、私にある。


「つーか里茉ちゃんから帰り誘ってくれるとか珍しいね?」


そう言いながら笑顔で此方を振り返った先輩は少し歩くスピードを緩めて、まるで覗き込むように私の顔を見つめた。


「いや、珍しいっつーか初めてか」

「あー…はい。多分そうですね」

「どうした?なんか話したい事でもある?」


先輩のその言葉に、思わず足を止めてしまった。

先輩と居るのは楽しい。すごく優しくて良い人だとも思う。

でも、それでも。

私は、思ってしまったんだ。


“彼氏”という存在が居れば、皇明と一緒に居られなくなるんだって事に気づいた時、思ってしまった。

それを知っていたら例えお試しだとしても告白を受けなかったのに、って。

そんな、先輩に対して失礼極まりのない事を思ってしまった時点でもう、先輩と一緒に居る資格なんて私には無い。

先輩と居るのは楽しいけど、でも──…


「…先輩、ごめんなさい」

「……」

「私やっぱり、先輩とは付き合えません」



それ以上に私は、皇明と一緒に居る方が、楽しいと感じるんだ。



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