ディープ・アフェクション
◇
「はい、じゃあ今日はこれで終わりなー」
担任教師の覇気のない声に乗せられたその言葉を聞いて、真っ先に椅子から立ち上がったのは多分、私だったと思う。
「あ、ねえ里茉~」
ガタガタと音を立てて席を立つや否や、一目散にドアの方へと向かう私の背後に友人の声が掛かる。
「今からさぁ、駅前行かない?ちょっと買い物付き合ってほしいんだけど~」
「っごめん!今日ちょっと急いでるから!」
もう一度「ごめんね」と謝罪をしてから今度こそ教室を後にした。
──昨日。
“付き合えない”とハッキリ告げた私に、先輩は“やっぱり、そっか”と笑った。
なんとなく、私がこの関係に乗り気じゃない予感はしていたと言っていた。こればっかりは仕方のない事だから、気にしなくていいよとも言ってくれた。
やっぱり私にはもったいないくらい、優しい人だったと思う。
だからこそ、先輩には先輩を大事に思ってくれる人と幸せになってほしいと、強く思った。
その後、私の家までの道中、他愛もない話しをした。そして最後に普通の先輩と後輩という関係に戻ろうという約束を交わして、笑顔で別れた。
呆気ないといえば、呆気なかったのかもしれない。
それは共に過ごした月日が短かったからなのかもしれないけれど恋ってもんは基本的に呆気なく終わるものなんだと、どこかで聞いた事がある。
それが本当なら、恋って少し、さびしい気がした。