僕惚れ②『温泉へ行こう!』
「……少し眠る?」

 到着までまだあと30分くらいかかるし。

 理人がスマホの時刻を確認しながら言う。

「おいで」

 うん、とも眠る、とも答えていないのに、彼は半ば強引に私の頭を自分の肩に持たせかけるように傾けさせた。

(う……。なんか恥ずかしい……)

 目の前に同級生がいて……甘えたみたいなこの姿を見られているんだと思うと恥ずかしくて堪らない。

 でも、もし今、身体を起こしたりなんかしたら、理人の厚意を踏みにじることになる。

 自分の羞恥心と理人の気持ちを天秤にかけて、私は理人への気遣いを選んだ。

「……ごめんね。せっかくの旅行なのに」

 恥ずかしいので、努めて正木くんのほうは見ないようにして理人の耳元に唇を寄せた状態でそうつぶやくと、私は観念して理人の肩に顔を埋めた。

 ぐっと近づいてしまったからかな。

 呼吸するたびにふわりと鼻腔をくすぐるさわやかなシトラス系の香りに、私は何だかドキドキと落ち着かない気持ちになってくる。

 肌を重ねているときに、時折理人から香るそのにおいは、いつの間にか性的なイメージとともに私の脳にインプットされていた。
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