ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「蒼さん、好き」

 恋い焦がれるように囁いて彼の後頭部に腕を回す。匂いを嗅いで熱い吐息を漏らした。このサラサラな髪が好きだ。蒼斗の髪質もまったく一緒で、撫でるたびに蒼さんを思い出していた。

「わざとやってる?」

「え、なに」

 急に既視感に襲われて動きを止める。

「煽られる」

 言葉通り、噛みつくようなキスをされた。息づかいを荒くしながら自身のバスローブも脱ぎ捨て、しっとりとした肌を押し付ける。

 蒼さんのすべてをもって、とろとろに溶かされて乱されていく。

「今夜は、すぐには入れないから」

 いったいなんの宣戦布告なのかと、快楽の波に襲われて、涙の膜が張った瞳で端正な顔を見上げる。

「いいね、もっとなかせたくなる」

 泣かせたいなのか、鳴かせたいなのか。

 普段は落ち着いて優しさと思いやりの塊のような人なのに、夜になると仮面が剥がれて別人のような顔を覗かせる。

 そうか、と思考がぶつぶつと断裂するなかで薄っすら思う。

 誰にも聞かせられない重すぎる愛を夜ごと囁くのは、彼の夜の顔が垣間見えているからなのかも。
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