【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

 「オカンで悪いか!」
 
 (から)のグラスをドンと置き、口元を拭いながら「アルコール度数の高いカクテルをください」と告げると、30代前後に見えるバーテンダーの目が泳ぐ。

 彼の目に私の姿はどう写っているのだろう。
 いや、どう見ても失恋した哀れな女性、そのままに違いない。


「……ロングカクテルでよろしいですか?」
「ロングでもショートでも構いません。とにかく思いっきり強いやつをください!」

 アルコールに強くもないくせに、あまりにも惨めすぎる自分を忘れたくて無謀なオーダーを入れる。

 しばらくすると「ロングアイランドアイスティーです」と言いながら、バーテンダーがロンググラスを置いた。

「急がずごゆっくりお飲みくださいね」
 
 そう告げる彼の目を見ずに、一見コーラみたいな褐色の飲み物を喉に流し込む。

 フルーティーな味わいに、案外飲みやすいなと思ったのも束の間、身体の内側からカッと熱くなってきた。

「次はソフトドリンクになさいますか?」
「いえ、同じのをください」

 そして2杯目のロングアイランドアイスティーを口にしたあたりから目が回り、そこからの記憶は曖昧なままだ。

 ただ、心地よいバリトンボイスに導かれて、誰かにすべてを委ねていたような……そんな夢を見ていたような気がする。


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