【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
「鮎川さん、あなたも秘書として彼の仕事ぶりを見てきたんじゃないんですか? 臣海さん、あんなに頑張ってるじゃないですか。どうして彼の実力を信じてあげないんですか」
今ここで小切手なんかを受け取ったら、私まで彼の努力を踏み躙ることになる。お金なんていりませんと改めて言い切った。
「ご希望に添えなくてごめんなさい。何の力もない平凡な女でごめんなさい。けれど私は臣海さんのことが好きで、一緒にいたくて……ただそれだけなんです」
すると鮎川さんはフッと口元を緩め苦笑する。ここに来てはじめての人間らしい表情だ。
「なるほど、そういう方でしたか……」
テーブルに並んだ2枚の小切手をビリッと破るとブリーフケースに仕舞い込み、腰を浮かせる。
「環妃様、参りましょう」
「えっ、でもっ!」
「これ以上ここにいても無駄です。この方の気持ちは変わらないでしょう。そして多分、臣海様も……」
そして彼は私に向かって頭を下げると、「大変失礼いたしました。またいずれお会いすることになるかと思いますが、今日はここで帰らせていただきます。では」
そう言って、渋る環妃さんを促して出て行った。