【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
6、久遠臣海 side臣海
北海道のほぼ中央、主要3空港を結ぶゴールデンルートのど真ん中に位置するリゾート地は、繁忙期であるスキーシーズンの2月だというのに観光客がまばらだ。
「徐々に客足は戻ってきているようですが、やはり自粛前には程遠いですね」
タクシーの窓から外の景色を眺めつつ、鮎川が呟いた。
「まあ、仕方がないだろう。今はどこの観光地もそんなものだ」
ここ数年のウイルス蔓延によって不要不急の外出の自粛が叫ばれるなか、観光業界の受けているダメージは相当なものだ。
不況の煽りを受けた国内外の企業が事業からの撤退や倒産を余儀なくされており、ホテル業を主体とするKUONグループも例に漏れず甚大な損害を被っている。
幸いにも我が社は健全な経営と潤沢な資金のおかげで持ち堪えることができているが、数々の新規事業計画はストップし、計画変更を余儀なくされている状況だ。
――だが、それが俺にとってのチャンスでもある。