【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
チャンスはピンチの片隅に隠れているものだ。
周囲が混乱し慌てだしたとき、そこには必ず穴ができる。
その小さな穴をこじ開けて向こう側に手を突っ込んでこそ、数少ないチャンスをモノにできるのだ……と、俺は思っている。
――まあ、俺自身も切羽詰まっているわけだが。
それでも先方にはこちらの弱みを見せず、余裕のある態度で挑まなくてはならない。
焦るな、空回るな、勇み足になるな。
自身も追い詰められたそのときこそ冷静に物事を見極め、慎重かつ迅速に行動を起こすのだ。
「おっ、あちらさんがお待ちかねだ。鮎川、サポートを頼むぞ」
「もちろんです」
中国系企業が経営するホテルの車寄せでタクシーを降りると、玄関から先方の経営陣が飛び出してくるのが見えた。
俺はよそ行きの笑顔を浮かべると、素早く臨戦態勢にギアチェンジする。
「ニーハオ、ジェービェンダ フェンジン ハオピャオリャン(こんにちは、ここは景色がいいですね)」
彼らに友好的に話しかけつつ、俺は高層リゾートホテルの建つ小高い丘からリゾート地全体を見渡した。
――菜月、待っていてくれ。
あの日……ニューヨークから帰国して菜月と会えなくなってから、すでに1ヶ月半が過ぎていた。