【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

 俺が自分の父親の存在を知ったのは11歳の冬、母親の葬儀の直後だった。

 母は1年近くにわたる闘病生活の末に乳がんで亡くなったのだが、その葬儀に見知らぬ男がおとずれて、突然『私が君の父親だ』と名乗り出てきたのだ。

 その男が俺の実の父親で、当時KUONグループCEOであった久遠龍臣(くおんたつおみ)だ。


 俺が生まれたのは千葉県北西部にある中核都市で、2DKの狭いアパートに母と祖母と3人で住んでいた。

 母はいわゆる『未婚の母』というやつだ。

 白石海冬(しらいしみふゆ)と言う名前で息子の俺から見ても美しい女性だったのだが、非嫡出子で父親のいない俺を女手だけで育てるためにかなり苦労をしていたのだと思う。

 昼間は市内の家具販売店で事務をして、家に帰ってからは夜遅くまで『文字起こし』の内職をしていた。

 『文字起こし』はその名のとおり、会議やインタビューの音声データを文字に起こす仕事だ。

 母は夕食後になるとダイニングテーブルでノートパソコンを開いて作業を開始する。聞こえてくるのが日本語だったり英語だったりしたから、今思えば翻訳も兼ねていたのかもしれない。

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