【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
とにかくそんな感じで母が忙しくしていたため、俺の世話はほとんどが年老いた祖母の手に委ねられていた。
祖母は俺のことをあまり好きではなかったのだと思う。
ちゃんと世話をしてくれるし虐待もされていないから憎んでいたわけではないだろうが、好ましくは思っていなかった……そんな感じ。
祖母がゴミ袋を運ぶのを手伝って俺も一緒にゴミ捨て場に行くと近所のお年寄りが寄ってきて、『白石さんも苦労するわねぇ』だとか『海冬ちゃんもせっかく留学までしたのにねぇ』、『相手の男は日本人? アメリカ人?』なんて立ち話がはじまる。
それに祖母が『年取ってから小さい子供の相手をするのは骨が折れる』とか『海冬はとても優秀な子だったから本当なら大企業に就職できていたはず』、『男に捨てられるためにニューヨークに行かせたわけじゃないのに』なんて返す。
そんなことがアパートの玄関先や散歩の途中で繰り返されるものだから、俺にも徐々にわかってきた。
亡くなった俺の祖父はアメリカ人で、祖母と母は祖父が事故で亡くなるまではアメリカに住んでいたらしい。
そして祖父の死後は日本に帰国して母娘2人で暮らしていた。
俺の母は懐かしの生まれ故郷であるニューヨークに留学し、そこで男と出会って妊娠して捨てられたのだ。
俺のせいで母も祖母も苦労をしているのだ……と。